◯ 薬はリスクを併せ持つものです
病気やけがを治すのに役立つ「薬」。
しかし、程度に差はありますが、どんな薬でも副作用を起こすリスクがあります。正しく使わなければ思わぬ副作用を引き起こすこともあります。
そのため、専門家から適切なアドバイスを受けて、正しい使用方法を理解してから使用しましょう。
◯ 副作用とは
副作用とは、例えば、アナフィラキシー(※)や肝機能障害のような、薬の望ましくない作用のことです。
(※)アナフィラキシー:アレルギー反応の一種。皮膚のかゆみ、じんましんなどが始まり、ひどくなると息苦しくなったり、ショック状態になることもあります。
薬を使用したからといって必ず起こるわけではありませんが、次のような人は、特に注意が必要です。医師や薬剤師に相談してから使用するようにしましょう。
・アレルギーのある人
・過去にひどい副作用を経験したことがある人
・医師の治療を受けたことがある人
・肝臓・腎臓など、薬の成分を代謝・排泄する臓器に疾患のある人
・他にも薬を飲んでいる人
・妊娠している女性、妊娠の可能性のある女性、授乳中の女性
・高齢者
また、「高所作業や、乗り物又は機械類の運転操作をする人」は、眠気、めまい・たちくらみ、低血糖、視覚障害等の副作用に注意が必要です。
◯ 薬を使用して異常を感じたら・・・
副作用は、ひどくなる前に治療をすることが大切です。薬を使用して異常を感じたら、すぐに医師や薬剤師に相談してください。薬の種類によっては、自己判断で急に中止すると危険なケースもありますので、注意が必要です。
医師や薬剤師に相談する際には、「何という名前の薬を、どのくらいの量・期間使用し、どのような症状が出たか」を説明できるようにしておきましょう。
お薬手帳に控えておくと、説明の助けになるので良いでしょう。
<こんな症状がでたら相談しましょう>
(例)発疹、かゆみ、皮膚や粘膜(口の中など)が赤くなる、胃痛、
発熱、だるさなど
医薬品ごとに発生する恐れのある副作用については、「患者向け医薬品ガイド」「ワクチンを接種する人へのガイド」「くすりのしおり」で確認できます。
また、「重篤副作用疾患別対応マニュアル」では、重篤な副作用の概要や初期症状を知ることができます。
これらの資材は、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページで見ることができます。
医薬部外品や化粧品を使用した際にも、異常を感じたらすぐに医師や薬剤師にご相談ください。
〇 副作用を防ぐために
副作用の発生原因は、主に以下の3つに大別できるといわれています。医療従事者は、それぞれに応じた対処法をとることで、副作用を防ぐ、または、早期に発見するように努めています。
①薬理作用のために起こる副作用
薬の効果の延長上で発現しうる副作用です。薬の本来の作用が強く出た(効きすぎ)場合、薬の作用の副次的な効果として出現した場合、服薬を突然中断したために反動で出現した場合に起こることがあります。
(考えられる副作用の例)
血圧を下げる薬:めまい(起立性低血圧)
血糖を下げる薬:低血糖 など
[このように対処します]
・比較的頻度が高いといわれています。薬の作用や、飲み合わせなどの患者さんの背景からある程度予想ができるため、あらかじめ、初期症状と対処方法をご説明します。
・薬の効果発現に伴い発現し、飲み続けると慣れていることもあります。その場合、症状が出ても、軽度であれば、「中断せずに続けてください」とご説明することもありますし、副作用の対策のための薬を処方されることもあります。
・中断時に反動が起こる可能性がある薬については、徐々に減量したり、他薬に切り替えるすることで、危険性の低減も可能です。
②薬物毒性のために起こる副作用
長期服薬のために体の臓器に負担がかかることで発現しうる副作用です。投与開始早期から起こることは少なく、薬をたくさん、長期間服薬すると起こりやすいといわれています。特に、薬の通過点である肝臓や腎臓への負担に注意が必要です。
[このように対処します]
・最小限の薬で治療をするためには、生活上の注意点に配慮し、正しく薬を使うことが大切です。
・薬によって、どの臓器に、どの程度起こりやすいか、というような薬の特性や、患者さんの背景(疾病歴など)から副作用の危険性を判断しています。肝臓や腎臓、血液系の障害は、血液検査などで見つかることが多いため、定期的に健康診断を受けることが、非常に重要です。そのため、健康診断や血液検をうけていらっしゃるかを、定期的にお伺いすることがあります。
③薬物過敏症のために起こる副作用
特異体質や薬物アレルギーのために、発現しうる副作用です。特異体質による副作用は、薬を使用してから早期に発現することが多いですが、薬物アレルギーによる副作用は投与開始6か月までに起こることもあるため、初めての薬の時や投薬開始早期は副作用チェックを厳重に行う必要があります。骨格が似ている薬にも注意が必要です。
[このように対処します]
・症状が発現したら、すぐに薬を中止することが原則であるため、「このような症状がでたら、薬を中止し、すぐに連絡してください」とご説明します。
・過去に副作用を起こした薬は、再度使わないようにチェックします。そのためにも、過去の副作用歴は、必ず、医療従事者に伝えてください。また、同系統の薬にも注意しています。
副作用に対しては、上記のように、副作用の発生機序ごと、患者さんそれぞれの危険因子を判断して、対応をしています。
薬の説明書には、たくさんの副作用が書かれているため、難しいと感じられることでしょう。その場合は、自分の場合は特にどのようなことに気を付けると良いか尋ねてください。頻度の高いものや、個々の状況に応じて注意すべきことをお伝えします。
副作用と聞くと、心配になるお気持ちはごもっともです。心配のあまり治療を中断することがないように、サポートをさせて欲しいと思っています。副作用を防ぐ、もしくは、早期に発見するためには、正しく対処することが大切です。
〇副作用を防ぐための要点まとめ〇
自分のことを、医療従事者に伝える
:治療中の疾患・治療薬、副作用・アレルギー歴、仕事の特長など
なにか異常を感じたら、すぐに医療従事者に伝える
◯ 薬の相談窓口:医薬品のことなどで困った時の相談窓口 (詳細はこちら)
参考資料)
[1] 厚生労働省、日本薬剤師会:「知っておきたい 薬の知識」、平成29年10月.
[2] 厚生労働省、日本薬剤師会:「知っておきたい 薬の知識」、平成30年10月.