夏にご用心:湿布薬と日光
多雨のあとの高湿な暑さの後も、各地では夏日が記録されているようですが、いかがお過ごしでしょうか。
熱い時に、まず心配なのが熱中症です。
熱中症予防のポイントは、やはりこれです。
・体温を下げる工夫(涼しい恰好、日陰、日傘・帽子)
・早め、かつ、こまめな水分補給
暑い時には、薬のことでも、気を付けていただきたいことがあります。
それが、本タイトルの 湿布薬 のことです。
中には、湿布薬に「かぶれる」かたもいらっしゃいますが、それには、2種類があります。
・接触性皮膚炎・・・湿布薬の成分(有効成分だけでなく添加物も)に触れることでかぶれている
・光接触性皮膚炎・・・かぶれの原因物質と光があわさることで、かぶれを起こしている
接触性皮膚炎の原因は、有効成分だけではなく、添加物もその原因になることがあります。そのため、有効成分は同一であっても、先発医薬品や後発医薬品の中でも、かぶれ(接触性皮膚炎)の発生頻度は異なるのは、そのためです。
光接触性皮膚炎とは、紫外線を浴びることで、①原因物質を介して活性酸素種が発生し、細胞を障害する場合や、②原因物質が変化することで、免疫反応が引き起こされた結果として、皮膚炎を起こす場合があります。後者は、微量であっても起こると言われています。
湿布薬の一部には、この光接触性皮膚炎に特に注意しなければいけないものがあります。ドラッグストアなどで市販されている一般用医薬品でも、光接触性皮膚炎に注意が必要な湿布薬もあります。
特に、「ケトプロフェン」という成分を含む湿布薬には注意が必要です。
光接触性皮膚炎の概念図
春から夏にかけて、紫外線量も増加してくるため、これからの季節は特に注意が必要です。
「日最大UVインデックス(観測値)の年間推移グラフ」測定地点:那覇
(●は2016年の観測値、細実線は1991年から2015年までの累年平均値)
出典:気象庁ホームページ (URL)
では、その対策として、どうしたらよいでしょうか?
最も大切なことは、
湿布薬を貼った場所を、紫外線にあてないようにすること です。
○はがした後にも注意
皮膚には、湿布薬の成分が残っています。『夜貼っていたがはがしたから、もう大丈夫』ではありません。使用後、4週間は注意してください。
○曇りの日にも注意
光接触性皮膚炎は、紫外線の中の UVA (長波長紫外線)が原因と言われています。これは、透過力が強く、曇りの日にも照射量が多いと言われています。曇りの日やガラス越しの照射にもご注意ください。
では、紫外線にあてないようにするにはどのような点に注意したらよいでしょうか。
○物理的に防御
濃い色の衣服・帽子を身に着けたり、貼付部位をサポーターで覆いましょう。
○日焼け止め
日焼け止めの表示項目をご確認ください。「PA+++」のものをご使用ください。
PA とは、UVA の防止効果を示すもので、PA+++ は、非常に防止効果がある、と言えます。
※ただし、湿布薬の成分で光接触性皮膚炎を起こす人の中には、「オキシベンゾン」など、日焼け止めの成分でも同様の症状が起きる場合があります。光接触性皮膚炎を起こしやすい方には、『紫外線吸収剤不使用』『ケミカルフリー』『ノンケミカル』と表記された日焼け止めの使用をおすすめします。このように書いてある製品は、皮膚炎の原因となる物質を含まないため、安心して使用していただけます。
◇もし変だなと思ったら、、、
発疹・発赤・かゆみ・刺激感といった症状が現れた場合、すぐに使用を中止し、紫外線が当たらないように患部を覆って、皮膚科を受診してください。
◇こんな方は、ご注意ください
湿布薬で光線過敏症が起きたことがあるかたは、内服薬でも注意が必要なものがあります(代表例:一部の抗生剤や一部の利尿剤)。湿布薬のことだから飲み薬には関係ないだろうとは思わずに、必ず、病院や薬局で、過去に皮膚が赤くなったことなどを、伝えてください。
・これまでに、内服薬や湿布薬などを使用後に、皮膚が赤くなった、腫れた、痒くなった、ピリピリ痛くなったなどの症状を経験したことがある方
・化粧品、日焼け止め、香水などにかぶれたことがある方
・屋外で活動(スポーツ・作業など)をする方
以上に該当する方は、湿布薬と紫外線に、特に注意が必要です。
◇まとめ
痛み止めの外用薬を使う方は、使用部位を紫外線にあてないようにしてください。
湿布薬(テープ剤をふくむ)だけでなく、塗り薬(軟膏、ゲル、クリーム)も注意が必要です。
それでは、対策ばっちりで、夏を乗り切りましょう!