2026年10月16日現在の情報
ヘパリン類似物質ローション0.3%「NIT」の一部製品が自主回収されています。
2026年10月13日、製造販売元の日東メディック株式会社は、製品から「ニトロソアミン類」という物質が検出されたため、一部の製品を自主回収すると発表しました。
ニトロソアミン類には、長期間にわたって一定量以上を体内に取り込むと、がんになる可能性を高めると考えられている物質があります。
ただし、検出されたからといって、すぐに健康被害が起こるという意味ではありません。
今回の回収内容と、健康への影響について説明します。
1.どの薬が回収されているの?
今回の対象となるのは、日東メディック株式会社が製造販売する「ヘパリン類似物質ローション0.3%『NIT』」の一部製品です。
- 製品:ヘパリン類似物質ローション0.3%「NIT」
- 対象の包装:50g、100g製品の一部ロット
- 回収開始日:2026年10月13日
- 回収区分:クラスⅡ
同じ成分を含む薬でも、すべてのメーカーの製品が今回の回収対象というわけではありません。
回収の対象になるかどうかは、製品名と製造番号(ロット番号)で確認します。
回収対象となる製造番号の一覧は、メーカーの公表資料に掲載されています。
2.ニトロソアミンとは?
ニトロソアミン類は、特定の化学物質が反応することでできる物質のグループです。
一部のニトロソアミン類には、長期間にわたって一定量以上を体内に取り込むと、がんになる可能性を高めるものがあります。
これらの物質は、食品や飲料水などからも検出されることがあります。
ただし、日常生活でも触れる可能性があるからといって、医薬品に混入しても問題ないという意味ではありません。
医薬品では、こうした物質ができるだけ混入しないよう、製造方法や品質の管理が行われています。
3.ニトロソアミンの混入は、今回が初めて?
今回が初めてではありません。
2018年には、高血圧などの治療に使われる「バルサルタン」の一部製品からニトロソアミン類が検出され、自主回収が行われました。
その後も、胃薬のラニチジンや、糖尿病治療薬のメトホルミンなど、複数の医薬品からニトロソアミン類が検出されたことが報告されています。
こうした問題を受け、日本でも2021年から、製薬企業に対してニトロソアミン類が混入する可能性を調べる自主点検が求められています。
また、2024年には、健康への影響を評価し、その情報を医療現場に伝えるためのガイダンスが整備されました。
検出された場合には、物質の種類や量、使用期間などを調べ、必要に応じて製品の回収などが行われます。
過去に同じような問題があったからといって、今回のリスクも同じとは限りません。
今回のヘパリン類似物質ローションについても、検出された物質の種類や量などをもとに、個別に評価する必要があります。
今回の製品で確認されたのは、「N-ニトロソジイソプロパノールアミン」という物質です。
メーカーは、薬に使われている添加剤などの成分が反応することによって、この物質ができた可能性があると説明しています。
4.どのくらいの量が検出されたの?
今回確認された物質については、長期間にわたる健康への影響を考えて、1日に体内に取り込む量の目安が設定されています。
| 基準 | 数値 |
|---|---|
| 1日許容摂取量 | 400 ng/日 |
| 今回設定された暫定管理値 | 2,680 ng/日 |
| 製剤1g当たりの暫定管理濃度 | 268 ng/g |
※ng(ナノグラム)は非常に小さな重さの単位で、1 ngは10億分の1 gです。
400 ng/日とは?
これは、その物質を毎日70年間にわたって体内に取り込む場合を想定し、発がんリスクを十分低く抑えるために設定された管理上の目安です。
この量を一時的に超えたからといって、すぐに健康被害が起こるという意味ではありません。
なぜ今回は2,680 ng/日なの?
今回の薬は2024年6月から販売されており、70年間使い続けてきた薬ではありません。
そこで、使用できた期間が限られていることなどを考慮し、厚生労働省との協議のもと、通常の基準の6.7倍に当たる2,680 ng/日という一時的な管理基準が設定されました。
これは、通常の基準を恒久的に変更したという意味ではありません。
268 ng/gという数値は、今回設定された管理上の濃度です。実際に検出された最大濃度を示しているわけではありません。
また、薬に含まれる量と、皮膚から体内に吸収される量は同じではありません。
5.健康への影響はどのくらいあるの?
メーカーは、使用可能な期間や設定された管理基準などをもとに、健康への影響を評価しています。
その結果、今回の物質によって、生涯の発がんリスクが大きく高まる可能性は極めて低いと判断しています。
また、メーカーが確認した情報では、今回の物質との関連が疑われる、発がん性を示す重篤な健康被害の報告は確認されていないとしています。
ただし、これは「健康への影響が絶対にない」「がんになる可能性がゼロ」という意味ではありません。
塗り薬であることも考慮する必要があります
今回の薬は、皮膚に塗って使用する薬です。
薬に含まれる物質が、すべて体内に吸収されるわけではありません。
実際にどの程度体内に取り込まれるかは、塗る量、皮膚の状態、使用期間などによって変わる可能性があります。
そのため、現在公表されている情報だけでは、使用した一人ひとりについて、がんになる可能性がどれくらい増えるかを正確に計算することはできません。
6.健康への影響が小さいと考えられるのに、なぜ回収するの?
医薬品では、実際に健康被害が確認されていなくても、品質や安全性を確保するために自主回収が行われることがあります。
今回、メーカーは、薬の製造から時間が経つにつれてニトロソアミン類の量が増える可能性を考慮しています。
一時的に設定した管理基準を超える、または今後超える可能性がある製品を回収することになりました。
具体的には、製造から25か月以上経過した流通品を対象とし、確実に回収するため、製造から20か月以上経過した製品を定期的に回収する方針です。
今回の回収区分は「クラスⅡ」です。これは、健康被害が発生する可能性やその程度を踏まえた回収の区分であり、実際に重い健康被害が起きたことを示すものではありません。
7.現在この薬を使っている方へ
- 薬の名前が「ヘパリン類似物質ローション0.3%『NIT』」か確認する。
- 容器や包装の製造番号を確認する。
- 回収対象に該当する場合は、使用を続けず、受け取った薬局や医療機関に連絡して、交換や代わりの薬について相談する。
回収対象か分からない場合も、薬を持参して薬局へ相談してください。
すでに使用してしまった場合も、今回の発表だけで重大な健康被害が起こると考える必要はありません。
ただし、使用期間や健康への影響について心配なことがあれば、薬剤師や医師に相談してください。
8.よくある質問
Q.以前この薬を使っていました。検査を受けた方がよいですか?
今回の発表を理由に、すべての使用者が特別ながん検査を受ける必要があるとは示されていません。
使用していた製品や期間、現在の健康状態などで気になることがあれば、医師や薬剤師に相談してください。年齢などに応じた通常のがん検診も大切です。
Q.ほかのヘパリン類似物質の薬も危険ですか?
今回の回収は、日東メディックの該当製品・該当ロットに関するものです。
同じ有効成分を含んでいるというだけで、ほかの製品にも同じ問題があるとは判断できません。
Q.回収されていない製品は使ってもよいですか?
メーカーは、今回の回収対象以外の流通品および今後出荷する製品について、現時点では回収などの措置は必要ないと判断しています。
ただし、最新の回収情報や医師・薬剤師からの案内を確認してください。
8.相談先について
お手元の製品について確認したい場合や、代わりの薬が必要な場合は、薬を受け取った薬局や医療機関へ相談してください。
日東メディック株式会社 おくすり相談窓口
電話:03-3523-0345
受付時間:9:00~17:00(土日祝日・企業休日を除く)
参考資料・出典
-
日東メディック株式会社(2026年10月)
ヘパリン類似物質ローション0.3%「NIT」ニトロソアミン化合物検出及び自主回収(クラスⅡ)に関するお知らせ(PDF)
検出物質、管理基準、健康への影響、回収ロット等の一次資料 -
厚生労働省(2024年6月18日)
医薬品に含まれるニトロソアミン類の体系的リスク評価手法に基づくリスクコミュニケーションガイダンス
リスク評価と情報提供の考え方 -
医薬品医療機器総合機構(PMDA)
医薬品におけるニトロソアミン類混入リスクへの対策
ニトロソアミン類に関する各種通知・情報提供文書 -
消費者庁 リコール情報サイト
ヘパリン類似物質ローション0.3%「NIT」の回収情報
回収に関する公的登録情報
本記事は2026年10月16日時点で公表されている情報に基づいて作成しています。今後の調査や回収状況によって内容が変わる可能性があります。最新情報はPMDAおよび製造販売業者の公表資料をご確認ください。





