2021/11/10 11:00
【新型コロナ】抗原検査キット
すでにご承知の方も、多いと思いますが、
薬局で医療用抗原検査キットの取扱いを可能とする緊急的措置が発表されました[1]。
そこで、ここでは、それについて、ご説明したいと思います。
①医療用抗原検査キットとは?
「抗原検査キット」とは
抗原検査キットとは、ウイルスが持つ特定のたんぱく質を検出する方法です。
確定診断でよく耳にする PCR 検査は、ウイルスの遺伝子を増幅させて検出する方法です。
PCR 検査は、微量のウイルスでも検出できる(感度が高い)優れた検査方法ですが、実施するためには専用の機械で検査するため時間がかかり、高価な方法です。
それに比べ、抗原検査キットは、微量のウイルスの検出には PCR 検査には劣りますが、専用の機械は不要で、その場で、10数分程度で実施できる点がメリットがあります。特定の抗原と反応する抗原抗体反応を利用した検査方法ですので、特異性(目的のウイルスのたんぱく質のみを認識する)も高いです。簡便に、迅速にできる、ということが特徴です。
「医療用」と「検査用」とは
これまでに市販で流通していたのは、「検査用」の抗原検査キットです。
今回、薬局での販売が認められたのは、「医療用」の抗原検査キットです。
「医療用」抗原検査キットとは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(通称、「薬機法」)に定められた基準で審査され、承認された診断用医薬品であるということです。
現在流通している「検査用」抗原検査キットとの違いは、「国による審査をうけたか否か」ということになります。
「医療用」抗原検査キットは、国が定めた審査で審査された上で、認められた製品であり、その性能に関する詳細な資料が公開されています。
②検査キットの結果は信用できるのか?
PCR 検査よりも劣る、と言われているため、心配されている方も多いと思います。
結論を先に申し上げると、
一定量以上のウイルス量があると、高い割合で陽性と判定されます(PCR 検査との陽性一致率8~9割)。
現在承認されている抗原検査法のうち、簡易検査キット18製品のうち、
①SARS-CoV-2 抗原のみを測定する、
②審査外用に国内臨床検体を用いた試験が掲載されており、
③PCR 検査と比較されている、
という3つの条件を満たしていた、13製品の性能を調べました。概要を以下にまとめます。
国内検査検体を用いた試験結果:
◯陰性一致率
〈解説〉簡易検査キット「陰性」のうち、簡易検査キットと PCR 検査のどちらでも「陰性」と判定された割合。
つまり、簡易検査キット「陰性」なのに、PCR 検査では「陽性」、つまり、簡易検査キットの「見逃し」があると、この値は低くなります。
陰性一致率:13製品中、10製品で100% (3製品は、95~98.2%)
◯陽性一致率
〈解説〉簡易検査キット「陽性」のうち、簡易検査キットと PCR 検査のどちらでも「陽性」と判定された割合。
つまり、簡易検査キット「陰性」なのに、PCR 検査では「陽性」、つまり、簡易検査キットの「見逃し」があると、この値は低くなります。
陽性一致率:
PCR 検査と比較した場合の陽性一致率は、13製品中8製品は、70%以上でしたが、
13製品中4製品は、50~69%であり、1製品は 36.4% と一致率が低いものもありました。
ただし、一致率が低い製品でも、検体に含まれるウイルス量を考えると、
ウイルス量が多い場合には、陽性一致率も高い、という結果でした。
◯陽性一致率と陰性一致率の見方
抗原検査キットの性能評価では、PCR 検査の検査結果と比較が行われます。
陽性一致率が高いということは、抗原検査キットでも PCR 検査と同様の結果がでたことを示します。
「検査の見逃し」=「PCR 検査では陽性とでるが、抗原検査キットでは陰性とでた」、場合などに、陽性一致率は低くなります。
つまり、抗原検査キットで「陽性」と出た場合、それは、PCR 検査でもおそらく陽性とでるだろうといえます(もちろん、確定申告のためには、PCR 検査も行われることがあります)。
しかし、抗原検査キットで、「陰性」だった場合、「抗原検査キットで陰性と出たが、PCR 検査をすると陽性とでるかもしれない」可能性を含んでいる、ということになります。
◯ まとめ ◯
したがって、
抗原検査キットで、「陽性」と出た場合
・・・保健所などの地域の窓口に、電話をかけて(訪問するのではななく)、指示にしたがって対処しましょう
抗原検査キットで、「陰性」とでた場合
・・・「陽性」の可能性も否定できません。
絶対に「陰性」だと断定できるものではないことを、ご理解ください。
これまで通り、基本的な感染症対策に気をつけて生活しましょう。
もし、具合が悪くなった場合、地域の医療機関などに、電話をかけてから相談しましょう。
基本的には、このように考えていただきたいです。
参考資料)
[1]厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部、厚生労働省医薬・生活衛生局総務課:「新型コロナウイルス感染症流行下における薬局での医療用抗原検査キットの取扱いについて」、令和3年9月27日.
[2]厚生労働省 >新型コロナウイルス感染症の体外診断用医薬品(検査キット)の承認情報
[3]日本疫学会 新型コロナウイルス関連情報特設サイト https://jeaweb.jp/covid/index.html
>新型コロナウイルス感染予防対策についての Q&A
※PCR 検査の正確性などは、こちらに詳しく掲載されています(著者注釈)