2021/12/03 09:00
【アンチドーピング】2022月1月からの変更点に注意
アスリートの皆さんの日頃の成果を発揮される姿には、心から尊敬と感動を覚えます。
そんなスポーツのフェアプレーの精神を尊重し、自分の身体を守るため、
気をつけないといけないことのひとつに、“アンチ・ドーピング”があります。
中でも、“うっかりドーピング”には注意が必要です。
病気の治療のために使用した医薬品が、実はドーピングで禁止されていた!という事例のことです。
病気の治療目的で使用したとしても、
競技能力に影響を与える可能性がある薬や方法は、
世界アンチ・ドーピング規程で、禁止物質・禁止方法として規制されています。
目的が治療目的かどうかは関係ありません。
スポーツをする皆様には、アンチ・ドーピングの観点から、禁止物質・禁止方法を使わない治療をしなければなりません。
その世界アンチ・ドーピング規定は毎年1月1日に改訂されます。
2022年1月1日からの改訂内容のうち、注意すべき点の一つを今回ご案内します。
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「S9. 糖質コルチコイド」の規則が厳格化されます
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「糖質コルチコイド」とは、いわゆる副腎皮質ステロイド薬と言われ、
過剰な免疫反応や炎症反応を鎮めるために、いろんな疾患の治療で使われています。
今までは、「全身に作用を及ぼすような投与経路」が「競技会検査」で禁止されていました。
(2021年12月まで)経口、経直腸、静脈注射、筋肉注射
(2022年1月から)
・全ての注射経路が禁止になりました(局所注射も禁止経路に加えられました)
・ウォッシュアウト期間が定められました
「ウォッシュアウト期間」とは、体内に入った物質が、尿や便中など、体外に出てしまうまでに要する期間のことです。
つまり、競技会の時に禁止物質が体内に残っていない状態を保つため、大会が近くなったら注意が必要です。
詳しい内容は、2022年の世界アンチ・ドーピング規程の日本ご飯が正式に公開されてからお伝えしたいのですが、一つだけ。
薬局薬剤師が声を大にしてお伝えしたいのが、「トリアムシノロン アセトニド」という物質です。
なぜ、これをあげるかと言うと、市販されていることがあるからです。
もちろん、この薬には治療には良い薬です。
市販薬として使われる場合、口内炎の治療薬として、塗り薬や口内に貼る薬として、市販されている薬に、「トリアムシノロン アセトニド」を含むものがあります。
しかし、これは
大会前の30日以内には、使ってはいけません!
口内に使うための、塗り薬・貼り薬であってもです。
軟膏などは、使った後も家に置いておいて、調子が悪くなると自己判断で使う・・・
という使い方をされることがあります。
そのような使い方をしてはいけません!
ただし、治療目的で使用するため、禁止物質を使わないと治療できない!という場合には、申請をして認められたら、使用できる場合があります。治療を受けているところで、しっかりと相談されてください。
スポーツマンの方は、市販薬を購入するときにも、必ずお薬手帳を持参されてください。
そして、お薬手帳には、「ドーピング禁止物質でないか確認してください」とあらかじめ書いておくと安心です。
心配なことは、ご相談ください。
注釈)
*1 世界アンチ・ドーピング規程・・・世界ドーピング防止機構(WADA)が定めたルール。毎年1月1日に改訂される。日本ドーピング防止機構(JADA)が日本語版を作成している。
*2 競技会検査・・・禁止物質・禁止方法は、“常に禁止されるのか”、“競技会検査で禁止”されるのか、二つに分類されています。世界レベルで活躍しているトップアスリートは、競技会外検査の対象であるため、常にアンチ・ドーピングの注意が必要です。
*3 治療目的での使用・・・治療のために必要な場合、全てを禁止するものではあります。その場合、TUE(治療使用特例)申請を行い、認められると使用できる場合があります。
これまでに書いた記事も、よろしければ、ご参照ください。
こはく堂薬局のホームページ >薬局・薬剤師とは >スポーツファーマシスト
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Special thanks
◯イラスト:イラスト AC https://www.ac-illust.com(阿部モノさん、miyukiiiさんのイラストをお借りしました)