2023/02/14 17:00

【市販薬】花粉症の薬/点鼻薬

薬効群別/薬の解説

>【市販薬】花粉症の薬/点鼻薬

 

こちらでは、花粉症対策として、どのような市販薬があるかをご紹介します。

花粉症をお持ちの方は、症状がひどくなる前の早めの時期から、アレルギー症状を抑える薬を続けて服用することで、症状悪化を防ぐことができると言われています。

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<花粉症の治療方針>

①花粉の除去・回避

②早めに治療を開始して、症状を抑える

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花粉症治療に用いられる薬には、飲み薬や外用薬があります。

まずは、点鼻薬について説明します。

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花粉症に使われる点鼻薬の成分には、薬効別に分けると3種類があります。

 

(1)ステロイド点鼻薬

 

ステロイドと聞くと心配する方もいらっしゃるかもしれませんが、点鼻薬として局所に使うことで、鼻の中の腫れを鎮めて鼻づまりを楽にしたり、くしゃみ・鼻水の症状を楽にする効果があります。薬によっては、鼻だけで作用して、吸収後は分解されて全身には作用しないように工夫された薬もあります(「アンテドラッグ」と言います)。鼻の局所に作用するので、全身への副作用はほとんど心配ないと言われています。

特徴は、「鼻づまり型」にも「くしゃみ・鼻水型」にもバランス良く効果が期待できるところです。ただし、炎症を鎮めて鼻づまりを楽にする薬ですので、鼻づまり症状への即効性は感じにくいかもしれませんが、炎症が治まってくると、鼻づまり症状にも効果が現れると思います。

医療用医薬品としても使われているものと同じ成分が、市販薬として承認されているものもあります。

 

鼻アレルギー診療ガイドラインでも、花粉症治療において、ステロイド点鼻薬は、軽症から重症まで、鼻づまり型やくしゃみ・鼻水型に対して、経口薬と併用しながら使うと、有効性であると言われています。

正しく使うことで全身性の副作用は心配なく、使用することができます。

 

市販薬のステロイド点鼻薬の注意点は、「季節性アレルギー性鼻炎」の薬だという点です。

1年のうち、3か月までの使用に制限されています。

これは、3か月以上必要な場合、他の病気の可能性も考えなければいけないので、

自己判断で薬を使うのではなく、医師の診断を受けてください、という意味です。

 

また、受診すべき症状の見極めについては、痛み鼻水の色がポイントです。

頭、額、頬に痛みがある場合や、鼻水の色が黄色や緑色で粘り気がある場合、細菌感染の兆候である可能性があるので、この場合は、医療機関を受診されることをお勧めします。

 

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 (2)抗アレルギー点鼻薬

 

抗アレルギー薬の中には、アレルギー反応を引き起こすヒスタミンという物質の働きを邪魔する抗ヒスタミン薬と、その他の作用機序の薬があります。

さらに、抗ヒスタミン薬は、第一世代と第二世代に分けられます。

第一世代抗ヒスタミン薬は、中枢にも作用するため、眠気の副作用や、唾液分泌も抑制し口渇の副作用が、特に高齢者では問題となることがありました。

第二世代抗ヒスタミン薬では、眠気や口渇の副作用が比較的少ないと言われています。

飲み薬(内服薬)では、現在第二世代抗ヒスタミンが治療の主体となっています。

 

市販薬の点鼻薬として用いられているのは、以下の二つです。

第一世代抗ヒスタミン薬である、クロルフェニラミンマレイン酸塩

ケミカルメディエーター遊離抑制薬(*)である、クロモグリク酸ナトリウム

単剤として用いられるのではなく、血管収縮薬として組み合わせて用いられています。

(*)花粉によってアレルギー関連細胞が弾けてアレルギー関連物質が放出されるのを抑える薬

 

医療用の抗アレルギー点鼻薬としては、

第二世代抗ヒスタミン薬である、レボカバスチン塩酸塩や、ケトチフェンフマル酸塩

ケミカルメディエーター遊離抑制薬である、クロモグリク酸ナトリウム

これら各単剤を含む点鼻薬が使用されています。

 

このように、医療用点鼻薬とは大きく異なりますが、いろんな成分を組み合わせて使うというのは、市販薬の特徴でもあります。

 

 

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 (3)血管収縮薬

 

血管収縮薬は、鼻中の毛細血管を収縮させることで、鼻の通りをよくする薬です。毛細血管に作用するので、即効性が実感できることが特徴的です。

ただし、あくまでも今ある症状を改善させる薬であり、原因疾患を治す薬ではありません。治療の補助的に使うことで、メリットが得られる薬とも言えます。

即効性がある薬ではあるのですが、その分、リバウンドのデメリットがあります。

長期間連用すると、血管収縮作用が薄れるとともに、周りの組織が増殖するため、逆に鼻づまりがひどくなることがあります(薬剤性鼻炎)。これを防止するためには、使用上限を守って、使いすぎないことが、非常に大切です。

 

医療用の血管収縮薬は、原疾患の治療に加えて、鼻づまり症状を楽にするために補助的に用いられます。

血管収縮薬のみを含む(単剤)薬が使われます。

 

市販薬の場合は、ほとんどが配合剤です。(単剤は、1種のみ)

 

抗アレルギー薬の作用で、くしゃみ・鼻水が出ないようにしつつ、

血管収縮薬の作用で、鼻づまりを楽にする効果が期待できます。

 

急性鼻炎・アレルギー性鼻炎・副鼻腔炎によって起こっている、鼻づまり・鼻水・くしゃみ・頭重感の症状を和らげるために使うことができます。

 

他にも成分が入っているものもあります。含有成分を見て、目的に合わせて使い分けると良いです。

ただし、複数の成分が入っているため、刺激が強い場合もあります。

・局所麻酔薬(リドカイン)・・痛みを和らげる

・殺菌薬(ベンゼトニウム塩化物)・・・殺菌作用 ただし、鼻中が荒れていると薬液がしみる可能性があります

・l-メントール・・・スーッとして、鼻が通ったように感じる ただし、好みが分かれる

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◯まとめ◯

◎市販の点鼻薬の選び方

このように「医療用」と「市販」の点鼻薬には、類似した点もありますが、違いもあります。

前提として、市販の点鼻薬を使う時には、使いすぎないことが大切です。

 

☆季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の場合

・これまでに花粉症の診断を受けたことがある人

・花粉症と同様の症状の時の薬を探している人

 →ステロイド点鼻薬(3ヶ月まで)

 

☆鼻づまりがひどい

・鼻づまりで眠れない

・とりあえず今の症状を何とかしたい人

 →血管収縮薬を含んでいる点鼻薬

 可能であれば、翌日にでも医療機関を受診することをお勧めします

(とりあえず、その場しのぎの薬です。原因疾患に対処するために診察をうけることをおすすめします)

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【重要なこと】

◯花粉症の基本は、花粉の除去・回避です。

薬を飲んだら、ノーガードで大丈夫、というわけではありません。併用することが、症状を軽減させるためには大切です。

◯市販の薬を買う場合も、一度は、医師による正確な診断を受けましょう。

こちらの記事は、以前に医師の診断を受けた方が、同じ症状に対して、病院に行く時間がないときに、市販の薬を使う場合を想定して書いています。

市販の薬を使って対処する時には、ここまでは自己判断でも大丈夫、というところと、これ以上は、必ず医師に相談するというところを見定めることが重要です。

◯病院で治療を受けている方、妊婦・授乳中の方は、自己判断で市販薬を使わずに、必ず病院で相談してください。

◯記事作成時点での情報に基づいて、記載しています。最新の情報をご確認ください。

 

 

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