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【医療者向け】経腸栄養剤の処方時の注意(2026年6月以降)
はじめに
令和8年6月以降、経腸栄養剤の処方においては 「医学的必要性の明確化」がより重視されます。 特に、処方箋コメントの内容によって査定・返戻のリスクが大きく変わるため、注意が必要です。
結論
処方理由が不明確な場合、査定されるリスクがあります
経腸栄養剤の基本的な考え方
経腸栄養剤は、 「食事の代替として必要な場合」に限り保険適用 となります。
つまり、
- 単なる栄養補助
- 食事が可能な状態での追加
これらは適用外と判断される可能性があります。
第1 基本的な考え方
保険給付の適正化の観点から、栄養保持を目的とした医薬品の保険給付の要件を見直す。
出典:「個別改訂項目について」、中医協、R8.2.3. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf#page=827
第5部 投薬 通則 6 入院中の患者以外の患者に対して、栄養保持を目的とした医薬品を投薬した場合は、区分番号F000に掲げる調剤料、区分番号F100に掲げる処方料、区分番号F200に掲げる薬剤、区分番号F400に掲げる処方箋料及び区分番号F500に掲げる調剤技術基本料は算定しない。ただし、当該患者が、手術後の患者である場合又は経管により栄養補給を行っている患者である場合はその旨を、必要な栄養を食事により摂取することが困難な患者である場合その他これに準ずる場合であって、医師が当該栄養保持を目的とした医薬品の投与が必要であると判断した患者に投薬する場合はその理由を処方箋及び診療報酬明細書に記載することで算定可能とする。出典:別表第一 医科診療報酬点数表 https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686842.pdf#page=221
よくある査定理由
以下のような記載は、査定につながりやすい傾向があります。
- 栄養補給のため
- 低栄養のため
- 食事量が少ないため
👉 いずれも 理由が抽象的で医学的必要性が不明確です。
査定を防ぐためのポイント
重要なのは、「状態+目的」を明確に記載すること
✔ 記載例
- 嚥下障害により経口摂取困難のため
- 食事摂取不良に対する栄養管理目的
- 消化吸収障害に対する栄養補給
- 経口摂取不能のため経腸栄養管理が必要
👉 患者の状態と目的が一致していることが重要です。
対象医薬品 (令和8年6月以降の運用)
今回の取扱いに関連する経腸栄養剤は以下の通りです。
イノラス配合経腸用液
エネーボ配合経腸用液
エンシュア・H
エンシュア・リキッド
ツインラインNF配合経腸用液
ラコールNF配合経腸用液
出典:「疑義解釈資料の送付について(その4)」 (事務連絡/令和8年4月21日)
👉 重要な点として、 製剤が異なっても判断基準は同じです。
最重要ポイント
「なぜ必要か」を明確に記載すること
これがない場合、 査定・返戻の原因となります。
まとめ
- 経腸栄養剤は例外的な位置づけ
- 保険適用には明確な理由が必要
- 判断の鍵は処方箋コメント
追記)
適正使用の指針を確認しましょう
4学会合同で、適正使用のための指針が作成され、公開されています。
経腸栄養剤が必要な疾患や、注意点がまとめられていますので、ご確認ください。
https://www.jspen.or.jp/news/information/医薬品経腸栄養剤適正使用指針の公表について
【学校薬剤師】アドレナリン点鼻液やジアゼパム点鼻液は教職員は使えないのですか?
(医療従事者・関係者向け)
Q. アドレナリン点鼻液やジアゼパム点鼻液は教職員は使えないのですか?
A. 条件を満たした上で、使用できるようになりました。
ーーー
学校薬剤師として、お答えします。
🏫 学校における医薬品の使用
― 安全に対応するための基本と実践 ―
1. 学校での医薬品の使用について
学校は、子どもたちが生活する場であり、医療を行う場(治療の場)ではありません。
そのため、
- 医療用医薬品の使用は原則できない
- 一般用医薬品も提供する場ではない
とされています。
つまり学校での対応は、「治療」ではなく「安全確保・応急対応」が基本です。
2. 使用できる場合(例外)
一方で、命に関わる緊急時には、例外的に医薬品の使用が認められています。
これは、一定条件下で医行為に当たらないと公表されているためです。
参考)厚生労働省医政局長通知:「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」、医政発第0726005号、平成17年7月26日.
✔ 使用できる条件(重要)
以下のすべてを満たす必要があります
- 医師の指示がある
- 保護者からの依頼がある
- 手順が事前に共有・確認されている
👉 この3条件がそろって初めて実施可能です
3. 現在、救急時に学校で使用できる医薬品
命に関わる緊急時に限り、以下のような医薬品については、必要条件を満たした場合に、教職員が使用することが認められています。
⚡ けいれん・てんかん発作
- 抗てんかん薬(坐剤)・・けいれん発作・けいれん重積状態
- ミダゾラム口腔用液・・てんかん重積状態
- ジアゼパム点鼻液・・てんかん発作
🚨 アナフィラキシー
- アドレナリン自己注射製剤
- アドレナリン点鼻液
🍬 重症低血糖
- グルカゴン点鼻粉末
いずれも目的は、「症状の進行を止め、命を守ること」です
対象の疾患や年齢など、詳細は、必ず個別にご確認ください。
あくまでも、医師の診察を受けていて、必要な薬剤の処方を受けている人のうち、必要条件を満たす場合です。
4. 追加された医薬品
アドレナリン点鼻液・ジアゼパム点鼻液について
厚生労働省の解釈が示され、新たに「使用可能な医薬品」に追加されました。
- 「学校等におけるアナフィラキシーショック時のアドレナリン点鼻液(ネフィー®)の投与について」、事務連絡、令和8年4月16日.
- 「学校等におけるてんかん発作時のジアゼパム点鼻液 (スピジア®)の投与について」、事務連絡、令和8年4月16日.
✔ 正しい判断基準
👉 必ず“通知”を確認する
これらの新薬が販売されると、薬効の特徴から、学校で使えるのでは?と考えてしまいがちですが、必ず通知を確認しましょう。
5. 救急時に学校で医薬品を使用するときのポイント
🚨 さらに重要なポイント
これらの対応は「治療行為」ではありません
救急車が到着するまでの“つなぎの対応”です
そのため、
⚠️ 必ず行うこと
- 医薬品を使用した場合には、必ず救急要請を行う(または同時に行う)ことが重要
👉 イメージ
- ❌ 薬を使ったから様子を見る
- ⭕ 薬を使う+すぐ救急要請
使用した後の医薬品の容器などは、救急搬送の際に、救急隊員に渡しましょう。
6. 学校としての準備
安全に対応するためには、事前準備が不可欠です。
✔ 必要な取り組み
- 校内マニュアルの整備
- 使用手順の明確化
- 教職員への研修
- 定期的なシミュレーション
🎯 大切な視点
「知っている」ではなく「動ける」ことが重要
まとめ
- 学校は「治療の場」ではない
- 医薬品の使用は例外的対応
- 判断は「通知」に基づく
- 対応は「救命のための最小限」
アドレナリン点鼻液やジアゼパム点鼻液は比較的新しい薬ですので、まだ、対応事例も少ないかもしれません。
ですが、皮下注射などと比べて侵襲性が低い投与手法ですので(投与に伴う痛みなどの負担が軽度)、今後、対応する事例は増えていくと予想されます。しっかりと確認しておきましょう。
ご不明な点はご遠慮なくお申し付けください。公式LINEからでも、ご質問いただけます。
第7回:循環器病は「予防できる病気」!今日からできること
循環器病は「予防できる病気」!今日からできること
こはく堂薬局|知っておきたい!循環器のはなし Vol.7
ここまで6回にわたって、循環器病について学んできました。心筋梗塞、心不全、心房細動、脳卒中…どれも命に関わる病気ですが、実は「予防できる病気」でもあります。
今回は、今日からできる予防のポイントをご紹介します!

予防の大前提:動脈硬化の危険因子を減らす
循環器病の多くは「動脈硬化」が原因です。動脈硬化を進める危険因子を減らすこと = 予防。
主な危険因子は…
🩸 高血圧
🍬 糖尿病
🧈 脂質異常症(コレステロール・中性脂肪)
🚬 喫煙
⚖️ 重慶肥満
🍺 過度な飲酒
ひとつでも当てはまったら、対策を始めましょう!

① 食事で予防する
✅ 減塩:1日6g未満が目標 → みそ汁を1日1杯に、漬物を控える
✅ 野菜・果物を多めに → カリウムが塩分の排出を助ける
✅ 魚を週2回以上 → EPAやDHAが血管を守る
✅ 脂っこいもの・甘いものは控えめに
❌ 極端なダイエットはNG!バランスが大切

② 運動で予防する
✅ ウォーキングがおすすめ! → 1日30分、週5日が目安
✅ 少しの工夫でOK → エレベーターより階段、ひと駅分歩く、テレビを見ながらストレッチ
✅ 有酸素運動が血圧・血糖・コレステロールを改善
⚠️ 持病がある方は、始める前にかかりつけ医に相談を

まとめ:今日のポイント
-
循環器病は「予防できる病気」
-
カギは動脈硬化の危険因子を減らすこと
-
減塩・野菜・魚を意識した食事
-
1日30分のウォーキングで血管を元気に
-
禁煙は最大の予防(リスクが半減!)
-
持病のお薬をきちんと続けることも大切

「完璧にやる」より「ひとつでも始める」ことが大切です。
お薬の飲み方や生活習慣のことなど、気になることは薬局でも相談できます。
次回は 🫀「こんな症状、放っておいて大丈夫?受診のめやす」をお届けします。お楽しみに!
シリーズ「知っておきたい!循環器のはなし」
発信:こはく堂薬局(薬剤師)
参照:日本循環器協会認定「循環器病アドバイザー」 eラーニング
※ 診断・治療については、必ず医療機関にご相談ください
第6回:脳卒中は時間との勝負!知っておきたいサインと対応
脳卒中は時間との勝負!知っておきたいサインと対応
こはく堂薬局|知っておきたい!循環器のはなし Vol.6

もし家族が突然こうなったら、どうしますか?
-
顔の片側が下がっている
-
片方の腕に力が入らない
-
言葉がうまく出てこない
これは脳卒中のサインかもしれません。一刻も早い対応が、命と後遺症を左右します。

脳卒中ってなに?

脳卒中 = 脳の血管のトラブルです。大きく3つのタイプがあります。
🔴 脳梗塞(約7割)
→ 脳の血管がつまる
🔴 脳出血(約2割)
→ 脳の血管が破れる
🔴 くも膜下出血(約1割)
→ 脳の表面の血管にできたこぶ(動脈瘤)が破裂

サインは「FAST」で覚えよう!
脳卒中のサインを覚えるキーワードが「FAST」です。
Face(顔)🙂
→ 「イー」と笑って。片側が下がっていない?
Arm(腕)💪
→ 両腕を上げて。片方が下がってこない?
Speech(言葉)🗣️
→ 短い文を言って。ろれつが回っている?
Time(時間)⏰
→ ひとつでも当てはまったらすぐに119番!


なぜ時間が大切なの?
脳梗塞の場合、血管がつまると1分間に約190万個の脳の神経細胞が失われます。
治療(血栓を溶かす薬など)には時間制限があります。
→ 発症から4.5時間以内が目安
早く治療を始めるほど、後遺症が軽くなる可能性が高くなります。
「おかしい」と思ったら、迷わず119番!

脳卒中の予防、できることはたくさんある
-
✅ 高血圧の管理(脳卒中の最大の危険因子)
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✅ 心房細動の治療(抗凝固薬が大切)
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✅ 糖尿病・脂質異常症のコントロール
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✅ 禁煙
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✅ 適度な運動
-
✅ 減塩(1日6g未満が目標)
日頃の生活習慣が、脳を守ります。

まとめ:今日のポイント
-
脳卒中 = 脳の血管がつまる or 破れる病気
-
脳梗塞・脳出血・くも膜下出血の3タイプ
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サインはFAST(顔・腕・言葉・時間)で覚える
-
発症したら一刻も早く119番
-
最大の予防は高血圧の管理

治療を続けているあなたへ
血圧のお薬、毎日きちんと飲めていますか? それが脳卒中の予防に直結しています。「FAST」を家族にもぜひ教えてあげてください。気になることは、薬局でもご相談ください。
次回は 🫀「循環器病は予防できる病気!今日からできること」をお届けします。お楽しみに!
シリーズ「知っておきたい!循環器のはなし」
発信:こはく堂薬局(薬剤師)
参照:日本循環器協会認定「循環器病アドバイザー」 eラーニング
※ 診断・治療については、必ず医療機関にご相談ください
第5回:脈が乱れるってどういうこと?心房細動のキホン
脈が乱れるってどういうこと?心房細動のキホン
こはく堂薬局|知っておきたい!循環器のはなし Vol.5
急に胸がドキドキする。脈をとると、リズムがバラバラ。なんだか息苦しい、フワッとする——。
もしかしたら、それは「不整脈」のサインかもしれません。
今回は、不整脈の中でも特に注意したい「心房細動」についてお話しします。
不整脈ってなに?
不整脈 = 心臓のリズムが乱れることです。
正常な心臓は、1分間に約60〜100回規則正しいリズムで拍動しています。
不整脈には大きく3つのタイプがあります。
- ⏩ 頻脈:速すぎる(ドキドキ)
- ⏪ 徐脈:遅すぎる(フラフラ)
- 🔀 期外収縮:リズムが飛ぶ(脈がとぶ)
特に注意したい「心房細動」
心房細動とは、心臓の心房(上の部屋)が細かく震えて、 規則正しく収縮できなくなった状態です。
- 脈が不規則でバラバラになる
- 自覚症状がない人も多い(無症状型)
- 高齢になるほど増える(80歳以上では約10人に1人)
心房細動で一番怖いのは「脳梗塞」
心房が震えると、血液がよどみ、
心臓の中に血のかたまり(血栓)ができやすくなります。
この血栓が血流に乗って脳の血管をつまらせると、
脳梗塞(心原性脳塞栓症)を引き起こします。
心房細動がある人は、ない人に比べて脳梗塞のリスクが約5倍になります。
心房細動は、見つけて・治して・予防する
🔍 見つける
- 定期的な健康診断
- 自分で脈をとる習慣(手首で15秒 × 4)
- 最近はスマートウォッチでも検知できるものも
💊 治す・予防する
- 抗凝固薬(血をサラサラにする薬)で脳梗塞を予防
- 薬やカテーテル治療でリズムを整える
- 生活習慣の改善(禁酒・減量・血圧管理)
まとめ:今日のポイント
- 不整脈 = 心臓のリズムが乱れること
- 特に注意したいのは心房細動
- 心房細動があると脳梗塞リスクが約5倍
- 自覚症状がないことも多い → 脈のチェックが大切
- 抗凝固薬で脳梗塞を予防できる
治療を続けているあなたへ
抗凝固薬を続けて飲んでいる方は、予防のためにとても大切なことです。
継続していただきありがとうございます。今後も、継続をお願いします。
自覚症状が少ないと継続するのは、とても難しいことですが、 自己判断でやめないよう、お願いします。
脈をとる習慣、始めてみませんか?
手首に指をあてて15秒数えるだけです。
気になることは、薬局でもご相談ください。
次回は 🧠「脳卒中は時間との勝負!知っておきたいサインと対応」をお届けします。お楽しみに!
シリーズ「知っておきたい!循環器のはなし」
発信:こはく堂薬局(薬剤師)
参照:日本循環器協会認定「循環器病アドバイザー」 eラーニング
※ 診断・治療については、必ず医療機関にご相談ください








