2021/12/17 12:00

おくすり Q&A /「薬がない」と言われた??

薬局で処方せんの薬を受け取られるとき、こんなことを言われた方もいらっしゃるかもしれません。

 

「この薬が手に入りにくい状況で、在庫がありません」

「違う会社の製品に変更しても良いでしょうか」

 

数日前に、報道されたこともあり、耳にされたことも多いのではないでしょうか。

 

 

◯なぜ、このようなことが起こっているのか?

 

世の中に、新しい医薬品が登場するまでには、多大な年月をかけた研究の成果が費やされています。

薬としての有効性と安全性を調べた後、製薬企業は、厚生労働省に、新薬として製造・販売するための申請を提出します。

これを、薬事・食品衛生審議会などの審査を受けて、「くすり」として認められると、新薬として、製造・販売することができるようになります。

さらに、販売したらそれで終わりではなく、販売後もさまざまな調査が行われ、「くすり」としての安全性が監視されています。

 

この医薬品を作るために、製薬企業は、GMP という法令を守って、医薬品の製造を行っています。

GMP は、医薬品や医療器具を製造する上で、製造者が守らなければならない内容を定めた法令です。

いつ製造しても、必ず、高品質の医薬品を常に製造できるように、原料の入手から、製造・管理・製品の出荷に至るまで、下の①②のハード面・ソフト面の両面について定められています。

 ①製造のための構造設備

 ②製造・管理のためのチェック管理体制(書類管理など)

製薬企業がこれを守って製造していることで、私たちは、医薬品を信頼して使用することができます。

 

非常に残念ながら、とある企業が、この規則を守っていなかったことが判明しました。

そのため、全く異なる医薬品が混入し、このことで死亡された方もいらっしゃいました。

本当にあってはならないことです。

 

このため、とある企業は業務停止になりました。

また、これを受けて、製薬企業は、正しく医薬品を製造できるように、全ての工程を見直しました。

その過程で不適切な事例が判明したりするなどの影響もあり、一部の製造がストップするなど、医薬品の製造体制は、非常に大きな影響を受けています。

 

生産できなくなった医薬品の影響で、他のメーカーに注文が殺到したり、後発医薬品が手に入らないため、先発医薬品に注文が殺到した結果、先発品の供給も追いつかずに不足している事態も発生しています。

 

日本製薬団体連合会が、厚生労働省の依頼で製薬企業に対して調査を行った結果を見ると、

通常通り出荷できているのは、12,301 品目で調査対象の 79.6%でした。

これを、先発医薬品と後発医薬品に分けて見てみると、

先発医薬品は、4461品目で、調査対象の95.6%、

後発医薬品は、6033品目で、70.6%でした。

このように、先発医薬品は、約5% は、医薬品の出荷に影響が出ており

後発医薬品では、約30% の医薬品で、医薬品の出荷に影響が出ている状態であることがわかりました。

 

このため、通常通り出荷できない医薬品は出荷調整がかけられている場合があります。

新規の薬局とは取引できない、など。

 

そこで、薬局では、卸売企業と連携しながら、決して買い占めることなく、なんとか必要な医薬品を確保できるように、尽力しています。

それでも、手に入らない場合に、メーカーの変更や、先発医薬品への変更をお願いしている場合があります。

 

 

◯「メーカーが違う」と言われたけど、大丈夫?

 

先発医薬品が販売されて、特許期間が切れた後、同じ医薬品成分の薬を、他の製薬企業が作れるようになります。

これを「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」と言います。

薬の開発費がかからないため、従来用いられていた医薬品と同じ成分を含む医薬品を、安く作ることができるようになります。

医薬品の費用は、みなさまが窓口で負担される金額の他、医療保険からも出されています。

日本の医療保険は、国民全員が受けることができるという点で、世界的にも他にはない、素晴らしい制度です。

後発医薬品を使うことで、医療保険の負担を減らすことができるので、医療保険制度を守ることにつながります。

 

後発医薬品は、販売前に品質を確認する試験(生物学的同等性試験など)が行われ、品質が確認されています。

後発医薬品を製造する企業も、先発医薬品と同じく、GMP 等の基準を満たしているところでしか製造することはできません。

製造後も市販後調査が行われ、監視されています。

品質については、基準を満たしていること、ご安心いただきたいと思います。

 

後発医薬品は、先発医薬品と、有効成分は同じですが、添加物が異なります。

そのことが、良い結果を招く場合もありますが(飲みやすい製剤加工が施されているなど)、

好ましくない結果につながることもあります(添加物に対するアレルギー反応など)。

その点は、私たち、薬剤師は、ここの医薬品の製剤の特徴を調べて判断しますので、

ご不明な点や、ご心配な点は、ご相談いただきたいと存じます。

 

参考)「ジェネリック医薬品」については、こちらの記事でご説明しました。よろしければ、ご参照ください。