2022/01/04 09:00
アンチ・ドーピング② アンチ・ドーピングのルール
前回、「ドーピングとは?」についてお伝えしました。
まず、知っておいて欲しいことは、
ドーピングとは、ルールに基づいて公平にスポーツをするという、「クリーンで公正なスポーツを守るための活動」である、ということです。
アンチ・ドーピングに関するルールは、「世界アンチ・ドーピング規程(CODE)」に定められています。
これは、ドーピングをなくし、クリーンなスポーツに参加するという、全てのアスリートの権利を守るために定められた、全世界・全スポーツの共通のルールです。
これができる以前は、国やスポーツごとにバラバラだったのですが、2004年に統一されました。
これは、アスリートだけでなく、指導者を含むサポートスタッフ、競技連盟、アンチ・ドーピング機関、政府が、共にアンチ・ドーピング活動を行っています。
日本におけるアンチ・ドーピング機関が、公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA)です。
アンチ・ドーピングに気を付けるために、守らなければならないルールが、「世界アンチ・ドーピング規程(CODE)」です。
さらに、世界アンチ・ドーピング規程に付随する国際基準が定められています。
◯禁止表国際基準(The Prohibited List)
この基準では、スポーツにおいて、禁止される物質と方法が記載された一覧表が示されています。
そのため、アンチ・ドーピングに注意するときには、この表に記載されていないことを確認しています。
大切なことは、禁止表国際基準は、少なくとも1年に1回改訂されることになっています(1月1日)。
そのため、以前は大丈夫だったとしても、最新の情報を確認しなければなりません。
この一覧表の中では、禁止される物質と方法が、「常に(競技会(時)及び競技会外)」と「競技会(時)においてのみ」の2区分に分けて記載されています。つまり、ドーピング検査の実施形態により、禁止となる物質と方法の範囲が異なります。
◯検査及びドーピング調査に関する国際基準(ISTI)
ドーピング検査の具体的な手順や、ドーピング検査におけるアスリートとアンチ・ドーピング機関の権利・義務に関するルールです。また、アンチ・ドーピングに関する情報の収取や評価、ドーピング調査に関するものも記載されています。<不定期改訂>
◯治療使用特例に関する国際基準(ISTUE)
禁止表に掲載された禁止物質や方法を、治療目的のために使用せざるを得ない場合、治療使用特例(TUE)を申請することができます。この国際基準では、その申請に関する手順や、TUEの付与または承認の検討手続き、不服申し立てについて記載されています。<不定期改訂>
つまり、禁止物質・方法は絶対に使用できないのではなく、アスリートが持つ疾患の治療のために使用しなければならないと申請して認められた場合は、使用することができます。その申請を、治療使用特例(TUE)と言い、この基準で定められています。
◯結果管理に関する国際基準
アンチ・ドーピング規則違反の事案が発生した時の結果管理手続きに関する国際基準です。
※2021年より新規制定
◯教育に関する国際基準
アンチ・ドーピングの教育、情報提供などに関する国際基準です。
※2021年より新規制定
◯署名当事者の規程遵守に関する国際基準(ISCCS)
世界アンチ・ドーピング規程(Code)の署名当事者であるアンチ・ドーピング機関や、国際競技連盟に対する規程遵守についての国際基準です。
この国際基準には、署名当事者の権利と責務、WADAが署名当事者に対し規程遵守状況の監査を行うことや、その評価、評価に基づく罰則について記載されています。この国際基準によって、組織的なドーピングや、アンチ・ドーピング機関や国際競技連盟が機能不全を起こしているケースにおいても、WADAが直接介入をできるようになりました。署名当事者の責任がより明確化され、実効性の高いアンチ・ドーピング活動を推進することを目的としています。
◯プライバシー及び個人情報の保護に関する国際基準(ISPPPI)
アンチ・ドーピング活動に関連して処理される個人情報のデータ保護や、プライバシー保護に関する国際基準です。プライバシー及び個人情報の保護に関する国際基準の内容は、不定期に改訂されます。
◯分析機関に関する国際基準(ISL)
WADAが認定する分析機関、その他WADAが承認する分析機関において、検体の分析および管理の手続きに関する国際基準です。
ーーー
ドーピングが「クリーンで公正なスポーツを守るための活動」であることをお伝えしましたが、
ドーピング検査が行われているということは、公正さを守るための取り組みが行われている、ということです。
世界的に見ると、日本でのドーピング検査件数は少ないと言われていたため、スポーツのフェアネスを確保するためにも、ドーピング検査数の増加が課題とされていました。
世界のアンチ・ドーピング活動に合わせて、日本で最大の総合競技大会である国体でもドーピング検査が実施されるようになりました(2003年の静岡国体から)。
こちらに、日本国内で行われたドーピング検査の件数をお示しします。
(データ引用元:公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(JADA))
ドーピング検査は、「競技会検査(ICT)」と「競技会外検査(OOCT)」に分かれています(後述)。
青色の競技会検査件数を見ると、日本におけるドーピング検査件数が年々増加していることがわかります。
(ただし、2020年の競技会検査数が急激に減ったのは、新型コロナウイルス感染症の影響で競技会が開催されていないためだと思われます)
一方、橙色で示した競技会外検査は、波はありますが、年々、検査件数が増加していることがわかります。(2020年も検査が実施されています)
このように、ドーピング検査数も増加している中、アスリートは、アンチ・ドーピングの正しい知識を持つことが必要であるといえます。
ーーー
まとめ
◯アンチ・ドーピングの基本的なルールは、全世界・全スポーツ共通のルールです
◯ドーピング禁止物質・方法のルールは、毎年改訂されます
◯最新情報を確認して、アンチ・ドーピングに気をつけましょう
ーーー
ーーー
②アンチ・ドーピングのルール (今回)
ーーー
これまでの関連記事