2022/01/07 09:00
アンチ・ドーピング⑤ 規則違反に学ぶ
実際に、どれくらいのアンチ・ドーピング規則違反が起こっているのかを見てみましょう。
日本で、アンチ・ドーピング規則違反について中立かつ公正な判断を行う独立機関である、日本アンチ・ドーピング規律パネルによって作成された情報をお示しします。
残念ながら、アンチ・ドーピング規則違反は、“0”ではありません。毎年、なんらかの違反事例が発生しています。
アンチ・ドーピングのために、過去の事例に学ぶことは、非常に大切なことですので、これまでにどのような事例があったのかを振り返ってみたいと思います。
ここに掲載するのは、違反した人を責めることが目的ではありません。あくまでも、学びを得るため、とご理解ください。
(個別の物質名などはあえて掲載していません)
①規則変更を把握せずに、使用し続けていた事例
ドーピング禁止物質・方法の規則は、少なくとも1年に1回改訂されますので、常に最新情報を確認する必要があります。
この方は以前から健康の理由のために、ある薬剤を使用していました。
ある年に、アンチ・ドーピング規則が改訂になり、禁止物質・方法に指定されました。それにもかかわらず、使用を続けていたため、ドーピング検査陽性と判定され、一定期間の出場停止処分を受けました。
その物質は、日本では医療用医薬品であり、診察を受けて必要と判断されないと使用することはできませんが、このアスリートの出身国では市販薬であり、比較的入手しやすい環境にあったことも、 問題の引き金になったかもしれません。
本来は、禁止物質に指定されるとわかった時点で医療機関に相談し、
・その薬剤を使わずに治療する方法がないか相談する
・治療のためにその薬剤が必要な場合は、治療使用特例(TUE)を申請する(認められた場合、使用できる)
など、行うべき対応はいくつかあります。
この事例から学ぶべきこととして、
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◯ 最新のアンチ・ドーピングの知識を持つこと
ルールは改訂されます。最新の知識を持ちましょう。そのためには、正しい情報を理解した人に相談することも大切です。
◯ 市販薬にも注意すること
市販薬であっても、アンチ・ドーピング規則違反になる可能性があります。市販薬が必要な場合でも、自己判断せずに、きちんと相談しましょう。
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が挙げられます。
②サプリメントに禁止物質が含まれていた事例
この事例では、チーム内で相談した上で、あるサプリメントを使用していたそうです。
ここで注意すべき点として、以下のことがあります。
・サプリメントや健康食品は、全成分を表示する義務がないこと
・当該サプリメントが、ある植物を濃縮して作られていたこと
・ドーピング検査を受けるときに、申告してなかったこと
医薬品を錠剤の型に成型するためには、錠剤の型に固めるための物質や苦味を感じないようにするためなど、有効成分以外にもいろんな添加物が必要です。医薬品は、法律で含有する全ての成分(添加物を含む)を表示するように義務付けられており、添付文書には、全ての成分が記載されています。
しかし、サプリメントや健康食品は、あくまでも「食品」であるため、全成分を表示する義務はありません。そのため、禁止物質が含まれているか確認することは困難です。
また、植物などの天然物は、どんな成分が含まれているか、全てを明らかにすることは困難です。産地や生産年月によってもばらつく可能性があります。さらに、濃縮した製品の場合、栽培時はごく微量かもしれませんが、濃縮すると検出できるくらいの量になる可能性もあります。
そのため、スポーツファーマシストとしては、天然由来のものや、サプリメント・健康食品が禁止物質でないことを証明することは難しい、と答えざるを得ません。
また、ドーピング検査を受けるときには、さまざまな書類に記載します。その中に、自分が使用している医薬品やサプリメントなどを記載する欄があります。この方は、他のサプリメントは記載したのですが、当該サプリメントは記載していなかったそうです。アスリートは、自分が摂取しているものを把握し、検査の時には、全てを申告しなければなりません。
ただし、この事例について、問題なのは、チーム内のスタッフに相談している点です(ただし、スポーツファーマシストではありませんでした)。もちろん、自分自身でアンチ・ドーピング禁止物質であるかどうかを調べることもとても大切ですが、それに加えて、アンチ・ドーピング専門家に相談することが大切です。
この事例から学ぶべきこととして、
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◯ サプリメントにも注意すること
サプリメントや健康食品は、あくまでも食品であるため、禁止物質を含まないか、保証することが難しいです
◯ 自分が摂取しているものを提示する
医薬品などを含め、自分が摂取しているものをきちんと把握し、正しい相談先に相談しましょう。使用しているものは、全てを提示できるように、常日頃から記録をつけておきましょう。
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が挙げられます。
事例紹介は、もう少し続きます(予定)。
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⑤規則違反に学ぶ (今回)
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