2022/01/10 09:00
アンチ・ドーピング⑥ 規則違反に学ぶ(2)
前回に引き続き、実例に学ぶために、いくつかの事例をご紹介します。
③サプリメントに禁止物質が含まれていた事例
ドーピング検査で陽性が出た後に、原因を調べた結果、使用していたサプリメントから、禁止物質が検出されました。
ここで、注意すべき点として、以下の点があります。
・サプリメントや健康食品は、全成分を表示する義務がないこと
・アンチ・ドーピング専門家に相談せず、自己判断していたこと
・ドーピング検査を受けるときに申告していなかったこと
この事例では、このアスリートは、以前から、あるサプリメントを使用していました。
それまで、サプリメントを使用しても、ドーピング検査で陰性がでていたこと、サプリメントのボトルを見て禁止物質が記載されていないと判断したことから、そのサプリメントの使用を続けていました。
しかし、ボトルの成分表示を見て記載されていないから大丈夫と思ったのは自己判断にしか過ぎませんし、ボトルの成分表示が全ての含有物質を網羅していない可能性もあります。また、周囲の人にも相談していましたが、相談相手の中には、アンチ・ドーピング専門家はいませんでした。
前回お伝えしたように、サプリメントや健康食品は、食品であり、全成分を表示する義務はありませんので、禁止物質でないことを保証することは難しいです。また、常に内容物が一定であるとも限りません。
おそらく、特製のサプリメントで、一般に市販されていないため、申告をしていなかったのかもしれません。
アスリートは、自分が摂取するものをきちんと把握し、ドーピング検査のときには、全てきちんと申告しなければなりません。(治療薬の場合、事前に TUE 申請が必要なものもあります)
この事例から学ぶべきことは、以下のことがあげられます。
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◯ サプリメントにも注意すること
サプリメントや健康食品は、あくまでも食品であるため、禁止物質を含まないことを保証することは難しいです。また、サプリメント等で補うのではなく、食事のバランスを整えることが先決です。
◯ 自分が摂取しているものを把握し、アンチ・ドーピング専門家に相談すること
医薬品なども含め、自分が摂取しているものをきちんと把握し、専門家に相談しましょう。使用しているものは、全てを提示できるように、常日頃から記録をつけておきましょう。
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④外用薬が原因だった事例
ドーピング検査陽性がでたあと、原因物質を調べたところ、皮膚に塗布する薬が原因と判明した事例です。
皮膚につける薬がなぜ?と思われるかもしれませんので、薬が効く仕組みを少し説明させてください。
飲み薬の場合、口から飲んだ薬は、胃や腸の中で細かく砕かれ、主に小腸で吸収され、体内に侵入します。さらに、血管内へと入り込み、血管を通って全身をめぐり、薬の効果を発揮します。その後、異物を体外へ追い出す仕組みによって体外へと排出されていきます。
これは、外用薬(飲み薬以外)でも同様です。皮膚につけた薬(塗り薬、貼り薬など含む)は、皮膚から吸収され、全身をめぐります。実際に、医薬品でも、全身に作用することを目的として、皮膚に貼る・塗る薬が開発されています。
目薬や点鼻薬であっても、その薬は全身をめぐります。
飲み薬(内服薬)だけではなく、使用する薬には注意が必要です。
この事例で使用された薬は、おそらく医療機関で独自に製剤されたものであろうと推測しているのですが、この事例のように外用薬でもアンチ・ドーピングの禁止物質に該当するものはいくつかあります。
受診するときは、「皮膚科だから」「飲み薬じゃないから」大丈夫だろうではなく、使用する薬には注意が必要です。
医療機関に受診するときには、自分がアスリートであることを伝え、アンチ・ドーピングに注意が必要であることを、必ず伝えましょう。
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◯使用する薬には気をつけましょう
アンチ・ドーピング禁止物質に注意が必要なのは、“飲み薬(内服薬)”だけではありません。
医療機関に受診するときには、必ず、アンチ・ドーピングに注意が必要なことを伝えましょう。
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次回からは、禁止物質の話やどうしたら良いかの話に入って行きたいと思います。
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⑥規則違反に学ぶ(2) (今回)
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